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ロンドンを拠点に世界へ日本の伝統音楽を紹介されている柳沢さん。最近はイギリスのコミュニティー向けに日本のアートとWellbeingを融合させたワークショップのプロジェクトを始めるなど、アクティブに活動されています。情熱を注がれているお仕事についてお話を伺いました。

●イギリスに来られたきっかけは?
日本では会社勤めをしていましたが、昔からクラシック音楽が好きで、オーケストラのマネージメントの仕事をしたいと思っていたんです。九十七年が私にとっての転機でした。当時はまだ珍しかったアーツ・マネージメントを専攻できるロンドンのシティ大学の試験を受け、電話インタビューを経て短期間で入学を決めました。その頃は日本ではオーケストラ・マネージメントという言葉もあまり聞きませんでしたから海外で勉強するしかなかったんです。

●シティ大学での勉強がきっかけで日本の音楽との出合いがあったんですね。
修士課程専攻中に初めて日本の音楽を意識し始めました。世界の音楽の中における日本の音楽って何なんだろう?西洋の音楽と日本の音楽の融合は果たして可能なのか?そして自分にとって日本の音楽とは何だろう…と。卒業後日本に一時的に戻り、音楽事務所で仕事もしました。ちょうどその頃、英国における大型日本文化行事「JAPAN2001」開催の準備があり、ロンドンのハイドパークのオープニングで私がプロデュースする津軽三味線のグループの出演を依頼され、ロンドン大学などで関連プロジェクトも実施しました。初めての仕事が成功した後、改めて私はこういう仕事をやっていきたいんだ、と思ったんです。翌年、文化庁在外研修員に選ばれ、二〇〇二年秋から一年間、再度イギリスに滞在することになりました。テーマは「イギリスにおける日本音楽の受容についての調査」でした。そして就労ビザを取得し、二〇〇四年からイギリスで日本の音楽をプロデュースする仕事を本格的に始めるようになり、muartsを立ち上げました。

●当初のお仕事で特に印象に残っていることは?
二〇〇三年、光栄にも漫画家のちば・てつや氏にご出演頂いてロンドンICAなどで行ったイベントがあります。日本からは歌手のおおたか静流、筝の竹澤悦子、キーボードのモーガン・フィッシャーが「FUTON LOGIC」というバンドを結成、ちば先生の漫画(映像)と音楽のコラボをしたんです。先生には、ご自身の漫画について大変貴重なお話をして頂きました。先生の漫画をフィルターにして見える六十〜七十年代の日本の社会の様相もイギリス人にとって面白かったと思います。実現不可能に見えたアイデアが実現して、とても嬉しかったです。その年からトルコ、ポルトガルの音楽フェスティバル参加など国外での仕事も増えていきました。

●今現在は主にどんなお仕事をされていますか?
和楽器を演奏する日本人アーティストの海外公演のプロモーションとプロデュースが中心です。純粋な古典音楽、現代的な感性を交えた演奏など様々ですが、音楽のスタイルに関わらず、私自身が納得できる音楽作りを目指しているアーティストを探します。深く伝統を理解した上で、ユニークなオリジナリティを表現するアーティストには本当の意味でユニバーサリティを持っています。ロンドンのKings placeで二年前にキュレートした三日間の日本音楽のフェスティバル”HIBIKIーResonancesfrom Japan“では、伝統と現代を大きなテーマにしました。ヨーロッパ各地には素晴らしい音楽フェスティバルがあり、これらに出演することはアーティストのステップアップに繋がりますし、参加する音楽家とのコラボレーションが新しいプロジェクトに結びつくこともあります。今年は三月からニュージーランド、オーストラリアの音楽フェスティバル参加、五月はドイツ十五会場での公演、その後はオランダ、ベルギー、モロッコ、オーストリア、イタリア、フランスでの仕事がありました。十月末には、ウェールズのカーディフで行われる大きな音楽の国際見本市で、沖縄の音楽をプロモートします。仕事は大変なことも多いですが、素晴らしい音楽家や関係者と出会うことでインスパイアされますし、才能ある音楽家と仕事をすると新しいアイデアも浮かんできます。最近は、昨年末に立ち上げたAzuki Foundationの準備と活動も忙しくなってきたんです。

●Azuki Foundationとは?
muartsでは基本的にプロのアーティストのプロモーション、イベントプロデュースをしますが、Azuki Foundationではイギリスのコミュニティーと深く関わりながら日本のユニークな文化を紹介していきます。きっかけは、二〇〇七年から活動している「ロンドン盆ダンサーズ」が一昨年、イズリントンのコミュニティ・センターでワークショップを行い、七十人のお年寄りが、非常に喜んでくれたことです。二〇十二年には、Big DanceというUK最大のダンスフェスティバルの一環として、お年寄りの為に盆踊りのワークショップを5週間イズリントンで実施、参加者、会場、主催者のArtsCouncil Englandから高い評価を受けたんです。

●具体的にはどのような活動をしたいとお考えですか?
例えば、この秋からは、イズリントン区のお年寄りのコミュニティ・センター三ヵ所であや取りとお手玉を使ったワークショップを十ヵ月に渡って行っていきます。指を使うあや取り、姿勢を正して集中を求められるお手玉とも、脳の活性化や心の健康に役立つという研究発表があります。イギリスも高齢化が進み、認知症や老人の孤立化が社会問題になっています。基本的な動きをマスターしたら、次はグループ単位であや取り、お手玉を使った身体表現の作品に持っていく予定です。場所や時間を問わずお金もかからず、一人でも二人でもできる、さらに基本形を発展させて人数も増やし、音楽や照明を使ったアート・プロダクションを一緒に作ることを目指しています。年齢を問わず誰もが持つクリエイティブティを新しい発想で提案したいんです。

●貴重な休日はどのように過ごされてますか?
仕事がらみの旅行が多く、時間を見つけて美術館を訪れたり、新しい通りやレストランを発見するのが楽しいですね。家に居るときは気晴らしにピアノを弾いたり、アート・ギャラリーに足を運んだり。元来アウトドア派ですからイギリスのカントリー・サイドを歩くのも大好きです。田舎のパブでローカルエールを飲むのは最高ですね!家からすぐのリージェンツ運河を散歩したり、エンジェルで普段のお買い物や友達とカフェに行ったりもしています。それと耳の”相対化“の訓練の為に常にあらゆるジャンルの音楽を聴いてます。

●これからやっていきたいことは?
過去、ドビュッシー、ベンジャミン・ブリテン、ジョン・ケージなど日本文化や音楽に影響を受けた作曲家の作品がありますが、今後は、西洋音楽も現代音楽も経験し尽くした日本の音楽家が、プロアクティブに西洋の作曲家や音楽シーンに良い影響を与えたり貢献していく動きが大切ではないかと思っています。まだ良くわからないけど、そのような方向付を助けられるようなプロジェクトが実現できたらいいな、と思っています。


柳沢晶子(やなぎさわ・あきこ)さん
学習院大学哲学科卒業。シティ大学ロンドン アーツ・マネージメント修士課程修了。2002年から1年間文化庁在外研修員として渡英。2004年にイギリスでmu:arts設立。イギリスを拠点に世界中に日本の伝統音楽のアーティストや日本文化をプロモート。音楽フェスティバルへの参加、コンサート、イベントの教育ワークショップの企画、プロデュースも行う。2013年10月にチャリティー組織Azuki Foundationを設立。
www.muarts.org.uk
www.azukifoundation.org




 

 

 

 


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