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「AKIRA」の世界から飛び出てきたような電気バイクzecOO(ゼクウ)は昨年十一月にBBC NEWSで紹介され、今世界中の注目を集めています。今回はデザイナーの根津さんにお話を伺いました。

●「ワクワクする電気バイク」をテーマにzecOOを作られた経緯を教えて下さい。
ワクワクってまず自分がワクワクしなくちゃ始まらないって思うんです。そして自分のワクワクが皆に伝わっていって、その結晶としてzecOOができました。zecOOを作るにあたって、形になるかもわからない段階から協力してくださったのが、千葉のバイク店、オートスタッフ末広の代表中村正樹さんでした。当初、中村さんも電気バイクを作るのは初めてだったので、バッテリーやモーターを探すのに苦労していたんです。そんな時に協力してくれたのがイギリスの企業でした。イギリスの製品は為替の心配もありますし、当時僕は日本の企業とやりたいと強く思っていたので迷いもありましたが、イギリスのベンチャー企業YASA MOTORSの社長がバイク好きで、千葉までzecOOの製造過程を見に来てくださったんです。そして「これはすごい!ぜひうちのモーターを使ってよ」と言ってくださって。子供みたいに喜んでいるその姿を見て、僕も心動かされ「じゃあお願いします!」と話が進んでいきました。モーターを動かすコントローラーも、イギリスの企業SEVCONのものを使いました。ショックユニットはNITRONの製品を使っていますが、昨年の東京モーターサイクルショーでは、同社のブースでzecOOを飾らせて頂きました。zecOOを作ることで、国を超えて、アメーバのように人が繋がっていったという感じです。

●なぜイギリス企業が協力的だったと思いますか?
各社の社長の優先順位がビジネスが一番ではなかったんです。まず初めにzecOOに感動してくださり、それからビジネスに発展しました。イギリスはバックヤードビルダーの国ですし、乗り物に対する深い文化観を持っているというのもありますが、やはりここまでイギリス企業との繋がりが重なると単なる偶然ではないなと思います。

●デザイナーになられた経緯を教えて下さい。
物心ついた頃から車の絵ばかり描いていました。高校生になると、ランボルギーニやフェラーリのデザインに憧れて、受験勉強中もノートの端にデザインを描いていましたね。大学で工業デザインを学び、その後トヨタに入社しデザイナーやコンセプトプランナーとして働きました。十三年後に退社したのですが、それは独立したほうが、世の中に対するアウトプットが増えると思ったからです。その繋がりの自由さやダイナミックさを、当時の僕は恐らく直感していて、世界中の面白い人達と繋がって、やりたいことを形にして世に問うていきたいと思ったんですね。独立後は、ご縁で様々なお仕事を頂いてやってきました。良いものを作れば、次の仕事へ繋がっていきます。でもだからこそ、一回でもイマイチなものを作ってしまったら次はないという緊張感を常に持って仕事をしています。僕の仕事は、お客様にワクワクしてもらえることが重要なので、そのために作り手もワクワクを共有したいと思っています。良い仕事をすれば、作ったもの自体にも作り手が投入した熱量が入るので、お客様がそれを手にとった時に、何となく他と違うと感じてもらえるんだと思っています。

●町工場から世界へというモットーについて聞かせて下さい。
今、日本のものづくりはすごく元気がない状態です。本来、日本人はものづくりに対して非常に高いポテンシャルを持っているんですよ。何も所謂ピラミッド型の組織で管理しなくても、一人一人が良いものを作っていけるはずなんです。日本には腕のいい職人が大勢いる町工場が多くて、オートスタッフ末広もその一つです。職人達は有名ではないですが、世界レベルの技術を持っています。今回zecOOをドバイのイベントに出展してそれを実感しました。でも日本ではそうした人達が埋もれていて、その腕を買い叩かれ、不当な扱いを受けているんですね。無駄に高く売る必要はないですが、良いものを適価で売り、価値の分かる人が価値に見合った値段で買うという状況にしていかないといけないと思います。僕らがzecOOのような一千万円もする電気バイクを作ったのも、こんなものを作っても世界には買う人がいるということを伝えたかったんです!シンプルで強いコンセプトのプロダクトを出すと、人の好き嫌いが明確になって、それに惹かれる人達が結集しやすくなるんです。そういうコンセプトのものに、技術を買い叩かれている人達はすごく反応して、自分もこれで技術を試したいと言ってくれるんですよ。zecOOプロジェクトの最終ゴールは、もっと良いものを作ってもっと売るぞという人が日本で現れることです。そうすれば日本のものづくりの現状を打破できると思います。

●バイクに灯籠、日傘やお弁当箱と幅広くデザインされていますが?
仕事はご縁だと思っているので、頂いたお仕事は基本的に断りません。だからこそ一生懸命やろうと思っています。僕はもともと車のデザインをやっていたので、水筒やお弁当箱のデザインは未経験だったのですが、勉強すればいいだけなんです。ジャンルは決めないほうが良くて、お弁当箱を作った経験が車を作ることに役立ったり、その逆もあります。色んな会社で僕がノマド的に仕事させて頂くことによって、個々の会社により高い価値のものを置いていけるような仕事を目指しています。

●作品のアイディアはどう生まれるのでしょうか?
相手の頭の中からアイディアを引っぱり出して、逆に僕の頭の中から相手がアイディアを引っぱり出すというイメージですね。会議には、企画担当や設計者の方にも同席してもらい、色々と質問してその場で答えをもらって話し合います。そこで殆どアイディアは決まりますね。色んな頭脳が揃うわけですから、会議は一番クリエイティブで楽しい場所になるんです。わからないことがあれば、素直に聞くようにしています。僕が聞いたことで、相手が常識だと思って疑いもしなかったことを掘り下げられたりするんですよ。

●ものづくりを通じて目指していることはありますか?
ものを作ることで、感じて考えて行動する人が増えればいいなと思います。例えば百円ショップは人気ですが、良くできたものを百円で作れることに感心してではなく、百円だからいいやと買ってしまう場合も多いと思います。マクドナルドのハッピーミールに付いて来る玩具はしばらく子供に静かにしてもらうための「キッズサイレンサー」と呼ばれることもあります。そういう話を聞くと、その場しのぎにその時だけ使われて、捨てられていくなんて、ものも不幸だなと思います。良いとも感じず、考えもせずにものを買うことを消費と呼ぶのであれば、リテラシーが低過ぎると言わざるを得ません。ビジネスとして成功させることはもちろん重要ですが、日本には消費のあり方を変えていける可能性があると思うんです。イギリスもそうですが、生活に対してのリテラシーや文化力の高さを根本的に持つ国が、ものづくりやその消費を変えていければいいと思いますね。

●今後の目標を教えて下さい。
zecOOを世界に向けて販売していきたいです。次はどんな国や人と繋がってものづくりをするのか本当に楽しみです。乗るか反るかの二択だと思うので、とりあえず迷ったらやるという気持ちで、ご縁があって来た話には向かって行こうと思っています。


根津孝太(ねづ・こうた)さん
1969年東京生まれ。千葉大学工学部工業意匠学科卒業。トヨタ自動車(株)を経て、2005年(有) znug design を設立。トヨタでの代表作はコンセプト開発リーダーを務めた愛・地球博の i-unit。現在は自動車をはじめとする工業製品のコンセプト企画とデザインを手がけながらミラノサローネや100%デザインなどで作品を発表。2011年 パリ Maison & Objet 'now' 経済産業省 JAPAN DESIGN+ 出展。グッドデザイン賞、ドイツiFデザイン賞他多数受賞。2012年Camatte(カマッテ)をトヨタ自動車と共同開発。同年TEDxSeedsに登壇し、電気バイクzecOOを紹介。ものづくりで人と人をツナグことを信条に多分野で活躍する。www.znug.com

 

 

 

 


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